Chikuwaのつぶやき

クラシック音楽、言語、ドイツ、物理など、雑食性です

ドイツ語単語 長すぎる問題について 実状

単語が長いことで引き合いに出されるドイツ語。やる気になればいくらでも単語をくっつけて長くでき切りがないので、ここでは会話やニュース、YouTubeなどで実際に出会ったものを紹介します。

インパクトある例

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実際にドイツのオフィスビルのお手洗いにあった掲示です。上に書かれている長い単語の意味、絵から分かるでしょうか。。。?


die Toilettenbürstenbenutzungsanweisung

正解はToiletten「トイレ」Bürsten「ブラシ」Benutzung「使用」Anweisung「説明書」です。絵の説明は左から「大間違い」「間違い」「ほぼ正解」「正解」と書かれています。ユーモアあっていいですよね。

どうして長くなる?

単語が長くなるのにもいくつか異なった理由があります。

単語の先頭や末尾に接頭辞や活用語尾がついている

動詞を名詞にしたり、形容詞を名詞にしたりするとき、語尾に色々つきます。これは英語でもありますね。動詞の名詞化には英語では-ing, -ment, -ion, -enceなど複数やり方がありますが、ドイツ語はほぼ-ungです。英語の-ingもゲルマン由来っぽそうですね。

die Anweisung 説明書、指示書

最初の例で出てきました。anweisen「指示する」の名詞化です。後で出てくる die Beschränkung, die Beschleunigung等もそうです。die Verschmutzung「汚染」は動詞verschmutzenの名詞化ですが、次のようなパーツがくっついてできています

verschmutzen =
ver-「状態を(悪い方向に)変化させる/〜し損なう」
schmutzig「汚い」
en(動詞化)

形容詞の名詞化の例としては

die Sehenswürdigkeiten 観光名所
die Staatsangehörigkeit 国籍

があります。~würdig「価値のある」という形容詞を名詞にするため-keitがつき、複数形にするため-enがさらに付きます。例えば

beliebteste Sehenswürdigkeiten in Wien ウィーンにある大人気の観光スポット

とかググれば、いろんな観光スポットランキングが出てきますよ。「国籍」については、Staat「国家」angehören「所属する」-ig「形容詞化」-keit「名詞化」がくっついています。日本語に直訳するなら「国家所属性」みたいな感じです。

英語では2、3単語であるところを、ドイツ語ではスペースをおかずに書く

冒頭の例はこれに当たります。これは単なる書き方の習慣であって、「話す聞く」の時には大して問題にならない、というのが僕の印象です。もちろんバラした後のそれぞれの単語を知っていなければ意味は分からないんですが。。。くっつける単語は

  • 「名詞」+「名詞」
  • 「名詞」+「動詞の名詞化」

がほとんどだと思います。

die Umweltverschmutzung 環境汚染

die Umwelt 「環境」 + die Verschmutzung(動詞の名詞化)← verschmutzen 「汚染する」です。

die Ausgangsbeschränkungen / Ausgangssperren 外出制限/禁止令

Covid-19関連のニュースでよく出るキーワードですね。der Ausgang は「出口、外出」です。die Beschränkungen(複数形)←die Beschränkung (動詞の名詞化)←beschränken「制限する」です。一方日本では出されない、禁止令はdie Sperren(複数形)←die Sperre(動詞の名詞化)←sperren「遮断する、止める」です。
ミュンヘンでも今年3月に入るまで誰もしていなかった「マスク」は

die Gesichtsmasken / Schutzmasken マスク

と呼ばれます。die Maskeだけだと、顔につけるお面や演劇用のようなものをイメージするようで、das Gesicht「顔」やder Schutz「保護」を前に付けます。ちなみにお気付きかもしれませんが、色々くっつけてどれだけ長くなっても、名詞の性別は一番最後の単語で決まります。die Maskeなのでdie Schutzmaskeです。

分離動詞

英語では「動詞+前置詞」のコロケーションになるような動詞も、ドイツ語だと1語で書きます。

sich mit A auseinandersetzen Aに(真剣に)取り組む

”自分自身とAをお互いに向かい合わせに座らせる”というイメージからこのような意味になっているんだと思います。auseinanderが「相互に離れて」という位置関係を示し、setzenが「座らせる」です。setzenを使ったもう一つの例として

voraussetzen 〜を前提とする

が思いつきます。vorausは 'Ich danke Ihnen im Voraus. (Thank you in advance)'のin advanceと同様に「事前に、前もって」という意味です。”(条件などを)前もって設定しておく”から「前提とする」になります。そう分かっていれば、長さに対する拒否反応も無くなってくると思います。ちなみにこれは名詞化もよくされます

die Voraussetzungen 前提条件

ungは名詞化、enは複数形です。

頑張って覚えた方が早いタイプ(泣)

残念ながら語源を辿ろうと思っても返って遠回りになるケースもしばしばあり、長い単語をまるっと覚えるしかなくなります。

die Geschwindigkeit スピード
die Beschleunigung ← beschleunigen  加速する

ungは動詞の名詞化なのですが、beschleunigenという動詞自体長い。。。前者を使ったdie Geschwindigkeitsbegrenzung「速度制限」とかdie Spitzengeschwindigkeit「最高速度」とかいう単語は、アウトバーンの話や車のレビュー動画で出てきます。ただ速度制限に関してはドイツ人にとっても長すぎて不便なのか、イタリア語と英語を混ぜたような(?)Tempolimitもよく使われます。最後に、可愛らしい姿と裏腹に長くて発音しづらいのが

Eichhörnchen リス

です。語学学校で学んだ際の発音のインパクトが大きすぎて逆に忘れられません。語尾の-chenは小さいもの、可愛らしいものに付けられるのですが、Eichhörnが何かは知りません。

以上、ドイツで実際に使われる、長めの単語をご紹介しました。また面白い例に出会ったら追記したいと思います。