Chikuwaのつぶやき

クラシック音楽、言語、ドイツ、物理など、雑食性です

民主主義政治制度のデジタル化 ー Liquitous

感情に流れやすく近視眼的になりやすい人間集団の思考と、その共同体の未来をより良くする実現可能性が高い政策と、この2つをどう繋ぐか。これが政治制度を考える上での中心的問題だと思う。哲人政治はとてもうまく機能する可能性を秘めてはいる(プロイセンのフリードリヒ2世とか、清の康熙帝とか)が、徳と知恵のある為政者を常に確保できるかというと、かなり難しいだろう。

有権者の多数決により代表者を選び、その代表者らが専門家の意見を取り入れながら政策を練るプロセスはとても理にかなっており、日本ほか多くの国に実装されている。一方でこの代議制は、各有権者の意志にピタリと沿った公約を掲げる代表者がなかなかいないというミスマッチの可能性をはらんでいる。経済政策についてはA氏、外交政策ではB氏、教育問題ではC氏に賛成する、というような状況で1票しか持っていないと、「民意」を適切に反映した投票ができない。僕が投票において最もフラストレーションを感じるのはこの点である。また、全ての分野について有権者おのおのが情報収集し、理解し、判断するのは負担が大きすぎるということもある。これらのデメリットを乗り越えるために議論されている方法の一つが、液体民主主義らしい。

liquitous.com

Liquitousがオンラインで実現しようという対話・合意形成プラットフォームは、代議制の対局にある、古代アテネのような直接民主政に近いようにみえる。利点としては、

  • 政策決定が社会や技術の変化に近い速度で行えるようになる
  • 有権者一人一人の意見が(採用されるとは限らないが)議論の場に提出される

ことが考えられる。

対面で話し合う会議室と、SNS(アイデア投稿、いいね、コメント)の良いとこ取りのようなものを想像する。このテクノロジーは、意見を提出するための精神的・時間的制約を軽減するが、しかし出てきた意見はタイムラインで流してしまわずに、集団内で練られていくようサポートする。なかなか良い塩梅であるように思われるから、今後地方自治体での取り組みがどう花を咲かせるか、気になるところだ。