Chikuwaのつぶやき

クラシック音楽、言語、ドイツ、物理など、雑食性です

車やバイクは単なる移動手段ではない!

肩身の狭いエンジン好き

2020年になり、車やバイクを趣味とする人間には肩身の狭い社会になりつつある。オイルショック前後から騒音被害軽減と大気汚染対策のため、車やバイクに対する法規制はエンジン音量や排出ガスを中心に進められてきた。2000年代からは化石燃料に依存しないクリーンな社会を作る、という大義名分も加わり、初度登録後経過年数の多い自動車に対する自動車税は増額され、エコカー所有者には減税という恩恵が受けられるようになっている。現在の液体電解質リチウムイオン電池よりもはるかに高性能な固体リチウムイオン電池の技術開発が進んでいるためか、イギリスやフランスは2040年までにガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止するとの宣言を出しているし、中国もその検討をしているらしい。僕らの生きている間に世界から内燃機関で走る車がなくなるとは思わないが、先進国において少数派になるのは確かだろう。今後20~30年でエンジン音を立て走る車やバイクに対し眉をひそめるような雰囲気ができてしまうような気がしてならない。
しかし車やバイクは単に移動のための道具ではなく、それらを趣味としている人々もいるのである。「分煙」の考え方のもと愛煙家がタバコを楽しむためのスペースがきちんと用意されているのと同様、ガソリンエンジン車にも公道を走る権利が確保されることを願っている。

ドライブ・ツーリングの楽しみ

大学に入ったら車やバイクを所有して運転したい、と考えている未成年は数少ないかもしれない。しかし学部やサークルの仲間がカッコいいバイクに乗るのを見てバイクの免許講習を受け始める人がいる。さんさんとした陽光を浴びエンジンの鼓動と心地よい風を体に感じながら、未知なるものとの出会いを求め、片側4車線の大きい国道から、舗装もされていない田んぼの畦道、標高1000m越えのスカイラインまでひた走ることの喜びは、経験した人にしか分からない。

何が楽しいのか?新しいものとの出会いである。初めて実家を離れて一人暮らしを始めたときも似たような感覚を抱いた。人生で行ったことのない場所に行き、見たことのないものを見て、食べたことのないものを食べ、初めて出会う人と話をし、新たに開拓した温泉の湯加減を確かめながらほっと一息。湯上がりに軒先でコーヒー牛乳を飲みながら、道行く人の人生をなんとなく想像してみたりする。単なる気分転換のみならず、自分の中にあった世界がまた1つ2つと広がり、新しい人生の楽しみを発見するような幸福感である。

これまで大学の仲間たちとも幾度となくドライブ・ツーリングへ出かけた。日帰りで山形へ行ってラーメンを3杯食べたり(キツかった)、蔵王の雪道を走って温泉とチーズ料理を楽しんだり、秋田との県境あたりまで峠道を駆け抜けたりした。夏休みにはフェリーにバイクを積み込んで苫小牧まで優雅な船旅ののち(それでも片道1万円少々)北海道を約半周、1400kmほど走った。本州人から見ると日本らしからぬ広大な草原と海、脱衣所もないワイルドな温泉、各地で食べる最高の海鮮とソフトクリームなど… また仙台から4泊5日で愛知まで1000kmツーリングをしたこともある。敢えて高速道路を避け、下道でたくさん寄り道しながらの旅である。福島県内陸部の渓流沿いを走り、東京に住む知り合いと食事に行き、江戸時代からある箱根のお茶屋さんで甘酒と餅を頂き、沼津で深海魚の寿司を食べ、浜松にある本田宗一郎の資料館を訪れた。
僕は電車旅も好きだが、公共交通機関では行けないようなスポットを含め自由自在に行き先を決められる車やバイクはなおさら好きである。慣れ親しんだエンジンの鼓動と音とともに、いつまでも旅ができますように!