Chikuwaのつぶやき

クラシック音楽、言語、ドイツ、物理など、雑食性です

ルツェルンフェスティバル2021の思い出

2021年9月10日(金)、ブロムシュテット指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートを聴くため、スイス・ルツェルンへ電車で旅行した。プログラムはシューベルトの未完成と、ブラームス4番。

オーケストラが本当に一つの生き物になって客席に迫ってくる立体感と迫力。
音量、音の硬さ、ザラザラした振動の激しい音から天に昇るような滑らかな音、音のスピード、どれもゲージいっぱいに使い切って一つの曲を作り上げている感じ。オーケストラはもともとそれができるけど、ブロムシュテットが更にゲージ目一杯まで要求しているよう。それによって未完成もブラ4も、エネルギーの高まり方が尋常ではなく、いつの間にか僕の呼吸も速くなっていた。

会場であるKKLホールは、1階中央後方で聴く限り、舞台と壁で結構音が反射して残響が残る。コントラバスの低音がものすごい強調されていたが、これは指揮者の意図だろうか?ベルリンでバレンボイム指揮のマラ1を聴いた時と同じように、音量の大きい場面ではホールの空間全体が響きで満たされる迫力がある。

ブロムシュテットは御歳94歳(!)だが、彼は歳を重ねてもテンポが遅くならない、珍しいタイプの指揮者のよう。むしろ熱が入りすぎて、僕には速すぎると感じる箇所がいくつかあった。
アンコールでは、シュトラウスのワルツ。憧れのニューイヤーコンサートの音をここで聞けるとは思っておらず、幸せだった。スネアのサッパリした装飾音がシャキッとオケを引き締める。優雅な場面から行進曲になる時、ティンパニコントラバスが見事な調和でブン!と一気にスピードを付けたのも大変印象的だった。ウィーン伝統の音を磨き続けるマイスターたちによるワルツは、絶品だった。

ただ残念だった点もある。
ブラ4第1楽章冒頭では、2ndクラリネットが盛大にビャとやらかした。4楽章最初のコラールでも誰か一人が違う音を吹いて、ハーモニーの進行がおかしかった。攻めの演奏をすると、やはりミスしてしまうことはあるようだ。数週間にわたりヨーロッパを周遊した最後の演奏会ということもあって、いくばかりか疲労が溜まっていたのかも知れない。

また、コンサート後外に出たら、出入り口のすぐ隣に行いの悪い若者がいて、スピーカーでズンズン音楽を流している。タバコ臭いし地べたに直接座るし、コンサート体験の興が一気に冷めてしまう。中央駅のすぐ近くに文化施設があるのは、聴衆がアクセスしやすくなる一方で、不良の溜まり場になりやすいという重大な欠点がある。

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ルツェルンフェスティバル
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ルツェルン KKLのコンサートホール

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城壁から見下ろす湖。湖畔にコンサートホールがある