Chikuwaのつぶやき

クラシック音楽、言語、ドイツ、物理など、雑食性です

夏目漱石「現代日本の開化」

青空文庫から読むことができます:
www.aozora.gr.jp

開化とは

漱石は「開化」を「人間活力の発現」と定義し、活力が外界の刺激に対してどう反応するかによって2種類に分類した。

  1. 消極的開化 ー 外から課される「義務」に対し、活力を節約しようとする方向の発展
  2. 積極的開化 ー 「やりたいこと」に対し、進んで活力を消耗する方向の発展

人間社会が抱える、慢性的な病

我々人間は生来、この両方向の発展を追求したがる質だから、古来より絶え間なくこの変化を繰り返してきた。しかし幸福の程度は上がっていないし、苦しみは軽減されていない。開化は次々に競争を生み、堂々巡りになる。かえって不安を増大させることも多い。

開国と明治維新

人間個人や集団の意識というものは、一点からある一点、そして次の点へと、弧を描きながら推移していくものである。ある考えを使い古し飽きたら別の考えへ引っ越す、というように、その過程は内部欲求に従って発生するのが自然である。しかし日本の開国と維新は、既に西洋で長い時間をかけて錬成された最先端の考え方を、外から突然持ち込んで行われ、社会はここ四五十年間、数段飛ばしで急いできた。短期間で通り過ぎてしまった波へは未練を感じ、今ある波には居候しているような空虚感を覚える。器械的に覚えた礼式は、自然と内に発酵して醸された様式や概念とは対極にあるのであり、我々は「皮相上滑りの開化」を経験しているに過ぎない。できるだけ神経衰弱に罹らない程度において、内発的に、自ら咀嚼しながら変化していくしかないであろう、と漱石は締めくくる。

2020年

現在の日本は「開化」しただろうか?